ああ……。



どうして、いつもそうなの?




だからずるいって。
いつもそう言ってるのに。



そう言うコト、するから……。






真っ直ぐに伸びる搭乗口の通路。


そのもっと先に、あたしの視線は引き寄せられた。

一気に視界が滲む。
ダメだよ、今はダメ。

だって、ちゃんと見なくちゃいけないんだから。


目を逸らしたら、後悔する。





「……」




無造作にセットされた、真っ黒な髪。


頬が真っ赤。
黒いTシャツに身を包んだ、なで肩の肩は大きく上下してて。
その動きに合わせて、クセのある髪がフワフワと揺れてる。


搭乗口の入り口に、両手をかけて
身を乗り出しているその姿を、あたしは一瞬たりとも見逃したくないよ。




やっと来た……

いつもいつも、ギリギリなんだって。







「……要……」




その言葉と一緒に、頬に一粒の涙が零れ落ちた。





「――え?」




あたしのその声に、振り返ったケンゾーさんは嬉しそうに「ヒュー」って口笛を鳴らせた。


少し伸びた前髪の奥の瞳が、いまだにあたしを探してる。



「未央ーッ!」



その声に誘われるように、あたしは飛行機の搭乗口から少しずつ距離をとる。