桜の木なんかどこにもないのに。
そっと頬に触れると、冷たくて。
少し濡れていた。
記憶をフル回転でたどる。
「……」
あ……。
そうだ、あたし海に落ちたんだ。
それで、最後に要にちゃんと謝ることが出来て……。
神様に感謝して……。
そっか。
あたし……そうなんだ。
て、事は。
ここが天国?
上体だけをなんとか起こしたあたしは急に頭上に影が落ちて顔を上げた。
そこには。
「でたああああああッ」
「えッ、なにがああああッ?」
アゴヒゲを生やした天使。
じゃなくて。
「ひゃああああ………あ? け、ケンゾーさん?」



