「あの! お風呂、ありがとうございます……」
お風呂から上がったあたしは、まだ庭先にいたケンゾーさんに声をかけた。
でも、その隣に典さんがいるのを見つけて思わず固まってしまう。
「あ、未央ちゃ~ん、アイス食べよぉ?」
典さんはにっこり微笑むと、手にしていたアイスキャンディを掲げた。
「……あ、あたしは……」
今、典さんの前で笑える気がしない。
すっごくやな奴になっちゃいそうなんだもん。
だけど、そんなあたしに気づいてかそうじゃないのか典さんはあたしの手を引っ張るとピンク色のキャンディを持たせてくれた。
「ん! これ苺味。 あたしこの甘ったるいの苦手でさ。 それなのに間違えて買っちゃって。 未央ちゃんは好き?」
「……苺……好きです」
「それなら手伝って!」
ポンッと髪を撫でられて、なんだか無性に泣きたくなった。
典さんのこと、あたしいい人だなんて思った事ない。
むしろ、要に付きまとう迷惑な人としか見てなかった。
だけど、そうじゃないのかもしれない。
あたしは彼女から素直にアイスを受け取ると、ケンゾーさんと並んだ典さんの隣にストンと座った。
「湯上りの女の子はいいね~。この石鹸の香り……そそるなあ」
そう言って、いまだに手にしているビールの入ったグラスをあたしに向けた。
――ギクリ
丁度アイスを口に運ぼうとして、その手が止まってしまった。
「バカ言ってないの! ケンちゃんには大切な人がいるんでしょ?」
「わははは。 居るような居ないような?」
そう言って、ビールをゴクゴクと飲み干したケンゾーさん。
大切な人って、きっとジーナさんの事だよね。
あたしはそんな2人の会話を聞きながら、パクッとアイスを頬張った。
その瞬間広がる、苺独特の甘酸っぱい味に喉の奥が焼けるように締め付けられた。
苺の味。
要の――…味。



