「……」
――……ポチャン
静まり返った浴室で、蛇口から滴り落ちる雫の音はよく響いた。
★
[未央sid]
★
あたし、何言ったんだろう。
頭の中が真っ白。
要、なんでここに来たのかな。
慌ててたのかな。
あたしはあの時、勝手に浮かんでくる2人の光景を消したくて湯船の中に沈んでいた。
息を止めて、どれだけ沈んでられるかな、なんて数を数えてみたりして。
そしたら、いきなり要があたしの体を引き上げたから。
ビックリした……。
もう全部吐き出しちゃいたくなった。
不安に思ってたことも。
――…指輪のことも。
やめちゃいたいって、そう思ってしまった。
だけど。
あたしは、自分がどんな言葉で要にそれを伝えたのかはよく覚えていない。
『……未央、ごめんな』
要はそれだけ言って、ここから立ち去ってしまった。
笑ってた。
優しく目を細めてた。
ドクン
ドクン
要……それは、なんの『ごめん』だったの?