「……」



――……ポチャン


静まり返った浴室で、蛇口から滴り落ちる雫の音はよく響いた。






[未央sid]






あたし、何言ったんだろう。


頭の中が真っ白。



要、なんでここに来たのかな。

慌ててたのかな。




あたしはあの時、勝手に浮かんでくる2人の光景を消したくて湯船の中に沈んでいた。

息を止めて、どれだけ沈んでられるかな、なんて数を数えてみたりして。



そしたら、いきなり要があたしの体を引き上げたから。


ビックリした……。



もう全部吐き出しちゃいたくなった。


不安に思ってたことも。
――…指輪のことも。

やめちゃいたいって、そう思ってしまった。





だけど。

あたしは、自分がどんな言葉で要にそれを伝えたのかはよく覚えていない。





『……未央、ごめんな』


要はそれだけ言って、ここから立ち去ってしまった。



笑ってた。
優しく目を細めてた。


ドクン

ドクン



要……それは、なんの『ごめん』だったの?