「落ち着いた?」
「……要はずるい」
ニヤリと笑った俺から顔を背けると、未央はバシャッと湯船に身を沈めた。
「なんで?」
「いつもそうじゃん。 いつも……。こうやって強引にしたら、あたしが黙ると思ってる」
「……」
両手で自分の肩を掴んで、唇まで湯船につかるその背中を俺は眺める。
「肝心な事は何も言ってくれないのに……聞きたい事なにも教えてくれないのに。こんなトコだけ勘がよくて。弱ってたりしたらキスされて。 ……だから、それで……まあいいか…なんて思えるけど……だけど、やっぱり不安は消えなくて」
「……」
「あたし、もうわかないよ」
なにが?
震えていた体を回して、俺を見上げたその瞳は、すでに涙で溢れていた。
それはお湯のせい?
湯気のせい?
「要が、わかんない」
ってか、なに言ってんだ?
未央のヤツ。
「しッ……信じようって……頑張ったよ? だけど……あたし、そんなにつ、強くなくて……」
何言ってんだよ。
声震わせて。
ボロボロに泣いて。
「ごめんなさい……ヒック…ごめん、要……あたし……」
何を……言わせてんだ?
――――……俺は。



