それは浴室で。
ここに来た時にチラッと見たけど、ここのお風呂も無駄に広い。
いた。
ここに、いた……。
ホッと溜息を零すと、俺はついでに小さく息を吸い込んだ。
「――未央?」
「…………」
中から返事はない。
居ないのか?
それとも返事をしないだけ?
それを確認するために、俺は戸に手をかけると少しだけそれを引いた。
「未央、俺だけど…………」
って、なっ……
その光景が目に入るなり、俺は勢い良く風呂場の戸を開いた。
湯船に見えるのは。
お団子頭だけ。
沈んでる。
もうほとんど湯船の中に沈んでる。
「なにしてんだよっ、未央ッ!?」
躊躇なく中に、入る。
七分丈のズボンの裾が濡れる。
だけどそんなのは全然気にする余裕もなく、俺は大きな湯船に足を突っ込むと両手も沈めた。
手探りで未央の体を掴むと、そのまま持ち上げた。
「へ? 要……きゃああああ」
「は? な、ちょ、や、やめッ」
ジタバタされて、腕の中から逃げた未央は湯船のお湯を思い切り俺に向かってかけた。
「変態ッスケベッ! 出てって! 出てけーッ!」
「イテッ。 ちょ、未央ッ。 1回落ち着けって!」
――ダンッ
「……ッ……」
両手をついて、壁と俺の間に未央の小さな体を押し込めた。
お風呂に入っていたせいからなのか、体も頬もピンク色だ。
乱れた髪に、潤んだその瞳。
だけど、どれも反抗的で。
すごく怒ってるのが捕まえた腕からヒシヒシと俺に届く。
上下する華奢な肩が小刻みに震えてて。
真っ赤な唇を噛み締めて睨み上げるその顔は、俺の理性を揺さぶってくる。
「……はあ……はあ……」
「……」
このまま、キスしてやろうか。



