見ると、典さんに負けないくらい大きな荷物を抱えたケンゾーがいた。
「おいおい、要く~ん。 舌打ちなんかしちゃっていいのかな?いけないよね~。 と、言うわけで、バーベキューの仕込み、君に決定ね」
「あ? んでそうなるんだよ」
「だから、舌打ち。 お兄さんに聞こえちゃったんだよね」
「あはは。 要の負け、だね」
「…………」
なんなのこの2人。
ケンゾーは容赦なくバシバシと俺の背中を叩く。
それから、本当に1人で仕込みをやらされる破目になって。
俺はやたらたくさんある肉やら野菜やらをひたすら切っていた。
トントン
トントントン
つか、誰がこんなに食うんだよ。
まだ終わらない材料を見て、うんざりしながら溜息をついた。
「未央ちゃん。 未央ちゃーーん」
「……」
ケンゾーのそのでかい声に、一定のリズムを刻んでいた手が止まった。
「未央ちゃん?」
俺のいる台所にまで顔を出したケンゾー。
キョロキョロ見渡してそれからジトーっと疑いの眼差しを俺に向けた。
「お前、そこに未央ちゃん隠してないだろーな」
「は?」
「どーこ行っちゃったのかな……未央ちゃああん?」
「……」
ケンゾーが去って行ったガラス戸を見つめながら、俺はその声を聞いた。
未央?
「あーこんなトコにいたのかあ。 探しちゃったよ」
「……ご――…ん――」
大きなケンゾーの声に対して、未央の声はまったく聞こえない。
またどっか迷子かと思った……。
「……アホくさ」
耳だけやたらと敏感になってる事に気づいて、俺は再び包丁を握り直した。



