思わず手を引っ込めた。
声の先を見ると、着替えをしたらしい神崎典が俺達に向かって手を振っていた。
「おーーい! この裏から海岸降りられるんだって! 泳ぎに行こうよ~」
大袈裟なくらい手を振り回す姿は、少し笑える。
チラリと未央を見ると、未央は神崎典をジッと見つめたままで。
その顔から笑顔が消えていた。
?
もしかしたら足痛いのかも。
俺は勝手にそう思うことにして、典さんを見た。
「俺らパース」
後ろについていた手をクロスさせて、バツを作った。
「えッ? せっかく海に来てるのに行かないの? 見に行くだけでも行こうよ」
白いTシャツが透けて、真っ黒な下着が見える。
いや、あれは水着だ。
大きな胸を降らして、典さんはこちらにドカドカと歩み寄る。
「まだいいよ。 典さんお先にどーぞ」
「ええっ!? こんなか弱い女の子に、1人で海へ行けって言うのね? なんてヤツ!」
「は?」
プリプリと怒ってる典さん。
面倒くさいなーと顔を歪めた、その時だった。
未央がサッと俺の前に立つと、そのピンク色の唇を開いた。
「行ってきなよ」
「…………あ?」
目を細めて、にっこり笑って。
ムカつくくらい楽しそうに、声を弾ませるんだ。
「典さん綺麗だから、1人だと絶対危ないって! 要行ってあげなよ、ね?」
シトラスの甘酸っぱいシャンプーの香りが、風に乗って俺まで届く。
「海に来たのに、泳がないなんで損じゃん」
「……何言ってんの?」
「あたし、まだ足痛いし……ケンゾーさんは買い出し言ってくれてるし。 要しかいないもん」
「……」
んで笑ってんだよ。
なんで笑いながら、泣きそうになってんだよ。
「――あ、そ」
――ムカつく。



