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「……足、痛む?」


そう言いながら、俺はニコニコしてる未央の隣に腰を落とす。


「んーん。 もう平気だよ」



プラプラと縁側に投げ出されてる未央の足を眺めた。


丁度良く筋肉の付いた真っ白な足が、ショートパンツから伸びている。

その綺麗な足が、絆創膏だらけで痛々しい。



「そか」

「うんっ」

「つか、あんなとこで迷子になってんなよ」

「あはは。 だよねー。 あたしってどんだけ方向音痴だっつのぉ。 ねえ?」

「え? あー……そうだな。 アホだな」

「そうだよね~。 もうとことんアホなの」

「…………」





なんだかなー……。


いつもなら言い返してくるはず。

なんだよ……。
なんかあった? あの時。



ポリポリと頭を掻きながらチラリと未央を盗み見た。


だけど、俺よりも先に未央がこちらを見てたようで、すぐにパチンと視線が絡まる。



大きな瞳が、揺れてる。



バレないように、そっと見たはずが。
見られてたのか……。

なんだか無性に照れくさい。


そう思ってる事だけがバレてしまわないように、俺は目を細めるとあえて気のないふりをした。




「……あんだよ」

「んー。 なんでもない」



は?


なにそれ。


なんかさっきから未央の態度が気に入らない。

フルフルと首を振ると、また空を見上げた未央。
高い位置だけ結んだ髪が、いつもみたいにピョンと跳ねてる。

おろしてる髪が、風に乗って優しく揺れた。




1人で勝手に出歩くなよ。
心配すんだろ。

居ないって聞いた時、寿命縮んだかと思ったっつの。


勝手に悪態をつきながら、俺は誘われるようにそのうなじに手を伸ばした。


いや、伸ばそうとしたその時だった。





「要ーっ!」