泣きそうになった。
「あーあ。泥だらけじゃん」
そう言って、呆れたように笑う要。
眉毛を下げて、首を傾げてあたしの髪に手を伸ばした要。
思わずその腕の中に、飛び込みたい衝動に襲われる。
要……。
要……。
あたしね?
「……」
だけど、そんなあたしの気持ちは一瞬にして、どこかに飛んでいってしまった。
「要ッ! 未央ちゃんいた?」
「……」
なんでかな?
なんでなのかな?
目の前が真っ暗になる。
要の微笑みの後ろから、同じように頬を火照らせた典さんが見えた。
一緒に……?
要と一緒にいたの?
要と一緒に。
2人であたしを探してくれてたんですか?
「未央?」
要の切れ長のアーモンドの瞳が、一瞬大きく見開かれた。
あたしは、重い体を何とか持ち上げて、木を支えにしながらようやく真っ直ぐ立ち上がった。
そんなあたしを見上げる要。
だけど、あたしはにっこりと口の端を持ち上げた。
「心配かけてごめんなさい! 散歩してたら転んじゃって……。あはは。 もう大丈夫ですっ。 さ、帰りましょー」
笑うしか、出来なかったよ。



