その時突然、背後で草を掻き分ける音がして、あたしの体はビクリと跳ね上がった。
な、なにッ!?
獣ッ?
身を縮めた瞬間、聞きなれた声があたしを呼んだ。
「―……未央ーッ!」
「……」
え?
「未央ー!」
一段と大きく聞こえ、ガサッと言う音と共に汗まみれの要が姿を現した。
「未央ッ!」
「……要……」
「……はあ……はあ……」
走ってきてくれたの?
ほんの少し、頬を赤く染めた要は、肩で息をしたままあたしを見つめると口をキュッと結んだ。
……怒られる!
反射的にそう思って、あたしはギュッと目をつぶった。
「こんな事で、なにしてんだよ……」
「……え? あの……」
息を整えながら、要はあたしの前にしゃがむとそっと顔を覗き込んできた。
耳に届いたのは、思っていたのとは違って。
低くて、掠れてて。
安堵の溜息と共に、まるで吐き出されるみたいな声。
身構えていた体の力が抜けて、顔を上げると前髪の間からあたしを見る要と目が合った。
その瞳は、優しく細められていて。
探してくれていたんだと、わかった。
――ズキン
『指輪を失くした』なんて、とても言えない。



