暫く波の音と、潮の香りを頼りに歩いていると、目の前に真っ青な空があたしを飲み込んだ。
「うわあ……」
それまで生い茂る木で遮られていた風も、待っていてくれたかのように足のつま先から頭のてっぺんまで吹きぬけた。
すごい……。
もう、ここは海なんだ。
そこだけ太陽の光を浴びて舞台のように海へ突き出た場所。
目の前はどこまでも抜けるように青い空。
下を覗き込めば、境目がわからないほど穏やかな海。
手を広げたら、空を飛ぶ鳥のように自分もそこに浮かんでいるようだ。
こんな場所があったなんて……。
自分1人の秘密基地を見つけたみたいな、そんなワクワクした感覚になる。
「……」
あたしはそこにストンと崩れるように座り込むと、大きく深呼吸をした。
今まで息をするのを忘れてたみたい。
綺麗な空気が、肺を満たすのがわかった。
そこに1本だけ生えてる木の幹にもたれて、ぼんやりとその景色を眺めていた。
左のほうに、町が見える。
どこかの漁港だろうか。
小さな船が行き来してるのが、ここから見て取れた。
それは、日本の光景で。
アメリカ育ちのケンゾーさんが連れて来てくれた場所だとは思えない。
なんか、小さなことで怒ってた自分がバカみたいだ……。
だけど、あたしは違和感に気づいたんだ。
「……あれ?」



