たしか……南って言ってたよね?

――ねっ!?




「……」



確かにケンゾーさんが指差した方角へ来たはず。
それに、あの庭から出られるような場所、あたしにはわからなかったし。

正門から出れば回れると思ってた。

だけど、さっきから一向に目的地らしい場所には着かないんだ。
それどころか、森はいっそう濃くなるし。
あたしを付きまとうような蝉の声までいつの間にかしなくなった。



まるで獣道。


ショートパンツにサンダルで来ちゃったから、足は傷だかけ。




「……どこよ、ここは」





どっちを見ても木。







……木!




迷った……。完璧な迷子。


誰か……助けて……。



「誰かーーっ!」



大声を出してみても、あたしの声は緑の中にスーッと吸い込まれちゃったらしい。

シンと静まり返って、余計に心細くなる。



戻ろう。


来た道戻ればいいじゃん!



あたしはガバッと振り返ると、早足で駆け出した。



ガサッ




「はあ……はあ……」




腰の丈まである草を掻き分けながら進む。

薄暗い木々の間から空を見上げた。



狭い狭い空。

生い茂る葉の隙間をなんとか青い空が見える。


そんなに時間は経ってないはずだよね?
まだ、みんなあたしがいない事に気づいてないかもしれない。


だって、気づいたならきっと探してくれてるもん。



「……はあッ……はあ……………
はあ…………」




――きっと。


要が……。