いつの間にか海は見えなくなって、山間の道を進んでいた。
鬱蒼と生い茂げる森の中で、道もどんどん狭くなる。
クッションの悪い車は、ガタガタとその振動をそのままあたし達の体に伝える。
「もー、この車ボロすぎ」
「ワガママ言わない。 この辺りだと思ったんだけどな」
典さんの嫌味にも、ケンゾーさんはどこか楽しそうに返しながら周りを見渡した。
「この辺!?」
って思わず驚いてしまうほどさっきから景色は変わってない。
両側に押し迫る木々のせいで、空がすごく狭くて。
車のエンジン音と、相変らずスローテンポの音楽と。
そして、耳をつんざくような蝉の合唱がまるであたし達を拒んでいるようにさえ感じてしまう。
こんなとこにあるの?って不安になるくらい。
だけどそんなあたしの不安をよそに、ケンゾーさんは鼻歌なんて歌ってるし。
ガタガタ
ガタガタ
いっそう道は悪くなってきた。
だけど。
その木々の間を抜けた瞬間、一気に視界が開けた。
「わ……」
思わず窓から身を乗り出す。
そこに忽然と現れたのは、まるでお寺のような大きな大きな建物だった。
滑るように車はその大きな門の前に止まって、ケンゾーさんが「着いたぞ」って言いながら先に外へ出た。
「……ほえ」
大きな門をこじ開けるようにして中に入るケンゾーさんの姿を片目に、あたしは立ちはだかる建物を見上げた。
凄すぎる……。
これが、ケンゾーさんちのもの?



