その帰り道。
遅くなるのは危ないからって、あたしと早苗は先に店を後にした。
街頭に照らされた歩道を、あたしと早苗の影が揺れる。
「でも、急展開だね。 ケンゾーさんって人がああ言わなくても、きっと相田はどこかに行くつもりだったんだよ」
そう言って「よかったね」ってあたしの頭をポンポンって撫でた早苗。
あたしは素直にうなずいた。
でも本当に信じられない。
こんなに急に、海に行けるなんて……。
しかも一泊旅行だよぉ~。
なんだか胸がドキドキしてきちゃった。
それからまだ誰もいない家に帰ったあたしは、自分の部屋に入ると思い切りベッドにダイブした。
はああ……。
疲れた……。
明日の支度もしなくっちゃ……。
そう思いながら、意識は深く深く沈んでいく。
要と2人で旅行に行ける。
絶対にラブラブの旅行にするんだって、その時のあたしはそう思っていた。
すっかり忘れてたんだ。
ケンゾーさんの言葉の意味も。
要と交わした言葉も。
あの人の事も。
なんにも変ってなかったことに。