ドクンって胸が震えた。
嫌な予感がしたんだ。
「美咲さん? なんて?」
「…………」
早苗が心配そうに、あたしの顔を覗き込んだ。
あたしは携帯の画面を見つめたまま、唇をキュッと噛み締めた。
「“カフェに来て”って。 要の様子が、いつもと違うって」
「……ケンカしたの?」
「――ん。 好きにしろって言われた。 またあの人来てるのかな」
神崎 典
要は、きっとあの人の事嫌いじゃない。
もし、嫌いなら……きっと感情を表に出したりしない。
にっこり笑って、適当にあしらっちゃうのが要の断り方。
だけど。
要のあの人に対する態度は違った。
迷惑そうに、眉間にシワを寄せて。
自分の感情を表に出してた。
ドクン
ドクン
また、だ。
心臓が鈍く、重く鼓動を刻む。
その音に、あたしは押しつぶされそうだ。
早苗は消え入りそうなあたしの声を聞いて、そっとその手を握りしめた。
「……未央。 ほら、もっと胸張って!」
マナ達と駅で別れたあたしは、早苗に引っ張られながらなんとか飴色のドアの前にいた。
足が鉛をつけたみたく重い。
――カランコロン
あたしの心とは、まるで正反対の涼しげな音。
いつもの甘いチョコレートとほろ苦いコーヒーの香りがあたしを包む。
「……」
ドクン
ドクン
そして、早苗にそっと背中を押されあたしは薄暗い店内に一歩を踏み入れた。



