眉間にシワを寄せた要。
だけど、そんなのあたしには関係なくて。



「なんでケンゾーさんなの?」

「なんでって……あーゆうふざけたヤツ苦手だろ」



視線を逸らさないあたしに、今度は要の方があたしから視線を外した。



意味わかんないよ。


この家に泊まる事を承諾したの、要なのに。




「あたしは……あたしはケンゾーさんがそんなにふざけた人だとは思えない。 ちゃんと、自分の考えて持ってて。 そのためにやるべき事わかってて。 大人の男の人だと、あたしは思う」

「……」




だったら神崎さんは?

あたしには、彼女の方が気になってて。
要に躊躇なく触れる、あの真っ白な腕がイヤで。




気が付いたら、あたしはそんな事を口走ってたんだ。



もうめちゃくちゃだよ。


こんな事言ったら、逆効果なのわかってるのに。



要は暫く黙ってあたしを見つめていたけど、ふと宙を仰ぐとそのまま背を向けてしまった。



ドクン

ドクン



体の奥から何かが押し寄せてくる。

それはあたしの頭のてっぺんから足のつま先まで支配してく。




「……あ、そ。 んじゃ、好きにしたら」


「……好きにするよ。 そんなの要に言われなくたって、あたしはあたしの好きにする!」




あたしの言葉を最後まで聞かないで、要は部屋を出て行ってしまった。

バタンとドアの閉まる音が、あたしの胸を潰してしまう。



その瞬間、堪えていたものが堰を切って溢れ出した。




なによ……。

なによ、なによ、なによ!



力を失った両足が、ガタガタと崩れてく。
ペタンと座り込んだあたしの足が、ポトポトと涙で濡れた。



「……ッ……うぅ……」




要のバカ……。
あたしの……バカ。



もう、やだ…………。