部屋の前まで来ると、あたしは小さく溜息を零した。
ドアノブを掴んでふと思う。
きっと、ケンゾーさんがアクセサリーを作っているのは。
お父さんに少しでも近づくためなんだろうって。
そして、いつも手にしていたあの半紙も、お父さんのお店の情報。
眉を下げて笑うケンゾーさんの顔が浮かんで、あたしはそれをかき消すようにドアを一気に開けた。
と、その時。
「きゃッ……」
いきなり顔の横に手が伸びてきて。
あたしの目の前を塞いだ。
なに?
恐る恐る顔を上げると、そこには。
……え
「……要」
「……」
いつのまにそこにいたんだろう。
あたしを通せんぼするみたいに、ドアに手を付いた要が、視線だけをこちらに落とした。
ドクン
その瞳と目が合った瞬間わかった。
要、怒ってる。
「……ど、どうしたの?
いきなり、ビックリするじゃん」
そう言ったあたしの言葉は、どもってしまって、もう挙動不審。
暫く黙ってた要は「はあ」って溜息を零すと、ドアに付いていた腕を曲げて首元に手を当てた。
少しだけ小首を傾げる姿に、思わずドキンと胸が高鳴る。
ドキン
ドキン
体温を感じる距離。
薄暗い廊下。
少しだけ空いたドアの隙間から、月明かりが光の筋を作ってる。
そんなロマンチックな2人だけの世界で、要が発した言葉は。
「俺が言った事、忘れたの?」
氷のように、冷めていて。
頭の奥から何かに引っ張られるみたいに、クラリとあたしの視界を濁した。



