玄関には。
「ケンゾーさん! どこ行ってたの?」
そう言ったあたしを見て、大きな荷物を抱えたケンゾーさんが、二カッと真っ白な歯を見せて笑った。
「落ち着いてから連絡しようと思ってたんだけど……。あ、勝手にいなくなってごめんね? 昨日言ってたように今日荷物まとめて出てったんだけど……結局泊まるトコなくなっちゃって。 もう1日泊めて?」
「……えぇッ!」
荷物を玄関にドサリと下ろして、両手を合わせて拝むようにあたしを覗き込んだケンゾーさん。
いや……あたしに言われても。
ここ、要の家だし……。
なんて返答に困っていると、
「……別にいいんじゃない?」
えええ!?
いつのまにかあたしの後ろにいた要が面倒くさそうに言って目を細めた。
その答えが信じられなくて、何度も瞬きを繰り返すあたし。
そんなあたしに一瞬だけ視線を落とした要は、リビングに引き返しながら小さく溜息をつく。
「けど、部屋の中、勝手に変えるのはやめてよね」
「おー、わかってるって。 んじゃお言葉に甘えて」
「……」
要はさっさと2階へ行ってしまった。
その後姿から、くろーいオーラが出てたのは、あたしの気のせい?
……きっと怒ってる。
階段を見つめたまま、呆然としていたあたしの隣にケンゾーさんが並んだ。
「もしかして俺、お邪魔だった?」
「べッ、別にそんなんじゃないですよ!」
って、わわわ!
あたし何どもってるの?
これじゃ、「そうです。お邪魔でしたよ」って言ってるようなもんじゃん。
……だけど、救われたほうが大きかったりして……。
要のあの瞳の引力は、時々怖くもあったんだ。



