それが知られたくなくて、あたしは要からパッと顔を背けた。
ダメダメ!
泣いちゃダメ。
グッと唇を噛み締めて、そのままになっていたにんじんを掴んだ。
まだその場にいて、あたしを目で追う要の視線が痛いくらい刺さる。
なにか話さなくちゃ。
なにか……。
「か、神崎さんね? あたしに“あなたが要の彼女?”ってすっごく興味持ってた。 要ってばやっぱり年上のお姉さんに気に入られちゃうんだね。 あんなに色っぽい人に好かれて、要は本当にすごいよ! あたしなんか、神崎さんを思うとやっぱり子供っぽいしね! あははは」
ペラペラと勝手に口が動く。
まるで自分じゃないみたい。
ああ。
あたし、何言ってんの?
もうダメだ。
心の中だけじゃなくて、あたしの体全部が真っ黒な感情に押しつぶされそう。
早く行ってよ。
あたしの見えないとこに、行って……要。
包丁を握って、あたしはにんじんを刻む。
トントンって、いつもならもう少しうまくできるのに。
今日は全然集中できない。
要のせいだ!
それに、もしここにケンゾーさんがいたなら。
きっとこんな話をしてなかった。
本当にどこに行ったの?
このまま先にアメリカに帰ったの?
トントン
トントントン
トン……
「……痛っ」
ハッとして自分の指を見ると、ジワリと赤い血が滲んでいた。
あちゃー……。
余計な事考えてたから……。
でも、傷は浅くて。
ほんの少し切っただけのようだ。
あたしはその指を自分の口へ運ぼうとした、その時だった。
突然、その手が強い力で掴まれた。
「……」



