「神崎典さんって誰?」
「…………」
こんな事聞いちゃダメなのに。
あたしはちゃんと要を信じてる。
だけど……頭ではそう思ってても、体は正直だ。
ドクン
ドクン
要になんて言われるんだろうって、さっきから痛いくらい心臓が加速していく。
口の中が粘っこい。
緊張……してるのかな、あたし。
しばらく要はあたしを黙って見つめていた。
そして、その綺麗な唇が小さく息を吸い込んで、ドアに手をかけていた要は体を反転させてしっかりとあたしと向き合う形になった。
「――俺が知ってるのは。 神崎典って名前と、大学生って事。それから家はカフェから10分の距離。 それくらいだよ」
そう言って、ドアにもたれかかるように、ポケットに手を突っ込んだ要。
少しだけ顎を上げると、見下ろすようにあたしを眺めた。
ドクン
ドクン
あたしを見つめるその瞳は、ゆるぎなくて。
たぶん嘘は言ってないんだって事を証明してた。
なんでかな……。
要はちゃんとあたしに教えてくれたのに、なんでなんだろう。
「他に聞きたいことは?」
「え? あ、うん。 ないよ」
「…………」
「…………」
加速する心臓は止められなくて。
あたし
何、泣きそうになってんの。



