考えてみれば。
アメリカで、あんなにケンゾーさんを毛嫌いしていた要が、日本にきて突然ケンゾーさんに好意を見せるなんておかしな話だ。
「すっかり忘れてた……」
「……身元もよくわかなんないんでしょ?そのケンゾーさんって人の事」
「うん……。 なんか7歳くらいでアメリカに渡ったみたいで。 お父さんが大手企業の偉い人みたい。 ケンゾーさんは親元を離れて暮らしてたみたいだけど……。知ってるのはそのくらいだし」
「ふーん。 ま、それもホントかわかんないよ? とにかく家から早く追い出しなって。未央って鈍感だし。 それに隙があるから、相田がいないうちに……なんて事になりかねないよ」
「……あのね。 要みたいな事言わないでよ」
「あはは。 心配してるんだって」
早苗はそう言って、あたしからクッションを抜き取ると、それをポンっとあたしに投げてよこした。
「とにかく。 その神崎典って人のことも、相田にちゃんと聞いてみな? 不安になって悩むのは、その後でも遅くないよ?」
「……うん」
そうだよね。
もしかしたら、神崎って人が勝手に要を追い回してるだけかもしれないし。
……それでも、あの色気のある人が、要に迫ってるって考えると……。
もおお!
消えて消えてぇえ!
勝手に頭の中のスクリーンに浮かぶ、2人の姿。
「……ね、ねえ早苗。 あたしって色気……ある?」
「はあ?」
大きな瞳をさらに大きくして、すっとんきょうな声を出した早苗。
だってあの人、あたしを見て自分に似てるなんて言ったんだもん。
あの人に似てるなら……あたしにだって色気があるって事なんだよね?
「……ぶふっ! あははははは」
瞬きを繰り返していた早苗が、いきなり吹き出したかと思えばお腹を抱えて笑い出した。



