「ふむ。そっかあ、だから要はあたしの誘いを断れないのか。 なるほど。
……うん。 あ、それじゃ未央ちゃん、またね~」
「え?ちょ、ちょっと……」
1人で勝手に何かに納得して、典さんは向日葵みたいな笑顔を残してくるりとあたしに背を向けた。
「待って……」
伸ばした手もむなしく、典さんは弾むような足取りで歩いて行ってしまった。
な……。
なんか今すごいこと言ってなかった!?
“誘いを断れない”って……なにっ?
なによぉおおっ!
バイトしてまだ3日。
なのに、要ってばもうあんな女の人に目、つけられてるの?
隙があるの、どっちなのよ!
「早苗ええ、あたしどうしたらいいのかなあ」
「相変らず大変なことになってんのね。 あんたら」
早苗は少し呆れたように、溜息をつくとテーブルの上にコトリとグラスを2つ置いた。
あたしは抱えていたクッションをバフッと叩くと、それをまた胸に押しやった。
早苗は突然訪ねてきたあたしに、嫌な顔ひとつしないで部屋に上げてくれたんだ。
もう陽も傾いて、オレンジの光に包まれる部屋。
「でもさ、そのケンゾーってヤツをどうして相田が家に上げてるの?」
「へ?」
顔を上げると、ジッとあたしを覗き込む早苗と目が合う。
少しだけ吊り上った大きな瞳。
その中に、何度も瞬きを繰り返すあたしが映る。
……理由……?
そうだ、あたしちゃんとした理由知らないんだ。



