「気になる?」
「え?」
不意に真剣な表情になったケンゾーさん。
意味がわからなくて、首を傾げたあたしにケンゾーさんは親指を立てると自分の後ろを指差した。
「……」
その先には、あの女の子のと要の姿。
真っ白な要のシャツに手をかけて、クイクイッと引っ張る彼女の肩を押して眉間にシワを寄せる要の姿。
む。
なによ……。
「気になってるんでしょ? あの2人のこと」
「なんのことですか?」
プイッと顔を背けて、テーブルの上のグラスに手を伸ばした。
汗をかいたそのグラスを口に運ぶ。
あたしの指に、雫が絡みついてそっと滴り落ちた。
「……ケンゾーさん、知っててあたしをここに連れてきたの?」
「……」
グラスを唇につけたままあたしは、伺うようにケンゾーさんを見上げた。
ケンゾーさんは、ただあたしを見つめて。
そして意地悪そうな笑みを浮かべただけだった。
「それじゃ、行こうか」
「え?」
ケンゾーさんはそう言って、テーブルの上に置かれていた伝票をサッと持って立ち上がった。
「え、あ、ちょっと待って! お金……」
慌てて鞄を引き寄せて中に手を突っ込むと、ガサガサと財布を捜す。
さっさとレジに向かっていくケンゾーさんの後を追いながらあたしは鞄の中に視線を落とした。
「……ぶっ」
ようやく見つかった財布を取り出したその時、何かに思い切りぶつかってしまった。
その衝撃で一歩二歩と後ろへよろめいたあたしの体。
「アタタ……」
まだジンジンする鼻をさすりながら、あたしは目を開けた。
見えた先は、突然立ち止まったケンゾーさんの背中。
な、なに?
ヒョイっと背中から顔を出したあたしは、そのままケンゾーさんの顔を見上げた。



