「あ」
――要だ。
買い出しにでも行ってたのだろう。
片手に大きな荷物を抱えて、白いワイシャツ姿の要が帰ってきた。
俯いていた要は、ふとその視線を上げてあたし達に気がついた。
「……未央?」
「お、お疲れさま」
なんて目があった要ににっこり微笑んでみたりして。
大きく見開かれたアーモンド型の瞳。
フワフワにセットした真っ黒な髪を揺らして、要はその荷物を下ろす。
「――なにしてんだよ、ここで」
あたし達の前にやってきた要は、そう言ってジロリと視線を落とした。
うわあ、超怒ってるし。
思わずビクリと震える体。
あたしはその視線から逃れるように、スカートをキュッと握った。
「何してるって。もちろんランチしに来たんだよ。 俺はあの家に未央ちゃんと2人きりでも全然問題はないんだけどね~」
「……」
ケンゾーさんはまるで要を挑発するみたいにそう言って、「オススメは?」なんてメニューに視線を落とした。
何も言えなくなった様子で、要は開いていた口をキュッと結ぶとくるりと背中を向けてカウンターの中に行ってしまった。
その様子をただ横で見守っていた美咲さんは、スッとその華奢な指を差し出すと花のような笑顔を再びあたし達に向けた。
「本日は、サーモンとアボガドのクリーム炒めと冷製豆腐と長芋のスープのセットがオススメとなっております。 べーグルとレモンのタルトも合わせていかがですか?」
そう言って、にっこりと微笑んだ。
わー、すっごく美味しそう……。
「じゃあ、あたしそれで」
「俺は、Cセットね」
「かしこまりました」
人間って不思議。
さっきまで全然そんな気分じゃなかったのに、美味しそうな匂いを嗅いだだけでお腹が減るんだもん。
去っていく美咲さんの姿をぼんやりと眺めながら、水の入ったグラスに手を上伸ばした。



