それから要は、すっごく不機嫌のままバイトに行ったんだけど……。
「……」
ブラウン管から流れる、朝のニュース。
今日も各地で猛暑日なんて、相変らず言ってる。
発達した雲で、突然の夕立にも気をつけてって。
そんな事をぼんやりと聞きながら、あたしはなぜかリビングから動けずにいた。
テレビの前に腰を落としたまま、チラリと横目でソファを盗み見る。
「……」
その先には……。
難しそうな英語の本を読んるケンゾーさんの姿。
さっきまでの怪しい様子なんてどこにもなくて……。
その表情は真剣そのもの。
……。
何しに、日本に来たのかな……。
ケンゾーさんが読んでる本は、アクセサリーの本で。
マスターのお店で、要も真剣に見てた文献に似てた。
あたしは、アメリカにいてもよく英語ってわかんなかったし、ましてアクセサリーについても詳しくない。
センスもなければ、指先だって不器用だ。
ケンゾーさんも、そうしてれば大人の男の人としてすごく魅了的な気がするもん。
すごいな……。
好きな事をするって、憧れる。
お店にいた要も、素敵で……。
かっこいいって、思った。
「そんなに見つめられちゃ照れるな」
「へ?」
その声にハッとして我に返る。
いつの間にか、ケンゾーさんは本から顔を上げて、あたしの顔を面白そうに眺めていた。
ひゃああ!
見てたのバレたっ!
パタンと本を閉じたケンゾーさんは、ソファからおもむろに腰を上げると、その身をあたしにグッと寄せた。
「未央ちゃん……」
「……え、ちょ……」
ふわりとあたしを包むのは、タバコとコーヒーの香り。
きゃああ!
た、助けてえええ!



