――と、その時だった。
ガチャリとリビングのドアが開いて、バイトに向かうため支度を済ませた要が顔を出した。
「……」
「……」
あたしと同じ。
『ここどこ?』って感じで、その表情をゆがめた要。
その眉間にはグッとシワがよった。
うわー、あたし知らないからね?
「……えーと、要……」
でも。
要が見てたのは、雰囲気を変えたリビングなんかじゃなかった。
「……おい! お前何してんだよ」
「何って、朝の挨拶だよ。 見てわかんないかなぁ? これだから日本のお子ちゃまは」
「……あ?」
「ふー、参ったな」って言いながら、ケンゾーさんはあたしの体を離すと、突然頬に唇を寄せた。
……な!
「ケンゾー、お前……」
口の端をクイっと吊り上げてニヤリと笑った要が怖い。
「わははは。 要ぇ、せっかくの綺麗な顔が台無しだぞ?」
「ふざけんな!」
「お~、こわ」
そう言って、要の反応を見て楽しんでるケンゾーさん。
バチバチと見えない火花が、なぜか見えた気がした。
……あたし遊ばれてる?



