……あれ?
朝起きると、リビングが大変なことになっていた。
「ここ、うち?」
一夜にして何が起こったのか?
固まるあたしは、ホケーと部屋を見渡す。
確かに、昨日は何もなかった。
見事に、ここがアメリカなのかと勘違いしそうな装飾品達が、平凡だったリビングを着飾っていた。
なんてゆーか、ネイティブアメリカン……。
「goodmorning Honey」
呆気にとられていると、流れるような英語が聞こえてあたしは我に返った。
「……ケ、ケンゾーさん!これ、どうしたの?」
見ると、ケンゾーさんはこの暑い真夏の朝、優雅にホットコーヒーなんかを飲んでる。
要が見たら、絶対怒るよ~。
慌てて彼の元へ駆け寄ると、ソファに掛けられてた大きな布に足がとられて視界がグラリと反転する。
「わっ!」
なんでこんなものがあんのよっ!
なんて思う余裕があった。
「……」
転んじゃうと思ってたあたしの体は、しっかりとまっすぐ立っていて。
ハッとして顔を上げると、またもやあの匂い。
香ばしいコーヒーの香りと、タバコのほろ苦い香りを連れて楽しそうなケンゾーさんの顔があたしを覗き込んだ。
「大丈夫? 未央ちゃんはいつも転びそうになってるね」
「え、あ……ご、ごめんなさいっ!」
「ははは、平気平気~」なんて言いながら、ケンゾーさんは手に持っていたコーヒーを一口飲んだ。
あたしを受け止めた時、コーヒー零れなかったんだ。
……奇跡。