後ろから、両手で塞がれてあたしは身動きが取れない。
な、なに……これ?
まるで寄り添うように、ケンゾーさんはあたしの顔を真上から覗き込んだ。
「運命だよ」
「え?」
……。
う、うう、運命!?
運命ってなにが?
切れ長の瞳が、真っ直ぐにあたしを見つめてる。
ドクンッ!
黒くて、ウェーブのかかった髪がなんとも艶めいて見えて。
意味もなく頬が火照りだす。
あたしはゴクリと生唾を飲みこんだ。
そんなあたしを見て、ケンゾーさんは満足そうににっこり微笑むとその体を離した。
「まさか未央ちゃんが日本に来てるなんて。 ほんとに要に会った時はびっくりしたよ」
「…………ほんと、偶然ってすごいですね」
び、びっくりした……
あのまま抱きしめられちゃうんじゃないかと思った……。
甘たるくて、ちょっとだけスパイスのきいた要のものとは違う。
――知らない香り。
タバコのほろ苦さと、コーヒーの香りだった。
いまだにうるさい心臓を服の上からキュッと抑えると、あたしは「はぁ」と小さく息をついた。
「偶然なんかじゃない。 俺とキミが出会ったのは運命としか言えないよ」
「…………」
『運命』
そんな事を簡単に言ったケンゾーさん。
なんて反応したらいいのかわからなくて、目が泳いでしまう。
オロオロと俯いたあたしの前髪に、フワリと何かが触れた。
「……な……な、な…………」
見上げた先に、甘く微笑むケンゾーさんがいて。
あたしは今のが、キスだとわかってしまった。
「俺はこのソファで休ませてもらうよ。 今日は突然だったからね。 おやすみ、ハニー」
「……」
真っ赤になったあたしを横目に、ケンゾーさんはさっさとソファに横になって目を閉じてしまった。
こ、この人、危険ーーーッ!



