首を捻ったあたしに視線だけを落とすと、要はクシャリと後ろ髪をすいた。
「さっきカフェの近くでバッタリ会って。 そんで泊まるはずだったホテル、日にち間違えてとってたみたいでさぁ。 今日だけ泊まらせて欲しいって頼み込まれたんだよ」
「そうなんだあ……。でもなんでケンゾーさんは日本にいるの?」
「さあ? ストーカーではないらしい」
……へ、ストーカー?
まるで自分の家のように、上がりこんだケンゾーさん。
電気のついたリビングから「おーい、ビールない?」なんて大きな声が聞こえてきた。
「最悪」
「あは、あはは……」
そんな声を聞いて、ガクッと肩を落とした要を見て、思わず苦笑いになる。
それにしても……。
せっかく2人きりの生活だったのになぁ。
ケンゾーさんがいたんじゃ、ラブラブできないじゃん。
「ふぅ」って溜息をついたのを同時。
リビングから勢い良くケンゾーさんが顔を出した。
「ビールもないのかよ、この家は!」
「るせぇなッ! んなもんねぇよ!」
ガバッと顔を上げたかと思うと、負けじと大きな声で言い返した要。
「おー、こわ」って肩をすくめたケンゾーさんをジロリと睨むと、そのまま2階へ上がって行ってしまった。
うわぁ、要ってば超怒ってた……。
でも……。
「……プクク」
なんだか、その姿がおかしくて、あたしは思わず含み笑いしてしまった。



