俺の肩越しに顔を覗かせた典さん。





「……はは~ん。 そういうコト」



「え」





誰、誰?と首をひねる彼女に口を開きかけたその時。

なにやら怪しいケンゾーの囁き声がして、思わず身震いをした。


顔を上げた俺の肩にガシっと腕を回すと、ケンゾーはその顔を寄せた。
そして後ろにいる典さんに聞こえないように、俺の耳元に唇を近づけて声をひそめた。



「……キミ、かわいい顔して結構罪作りだね。 日本の女の子はワイルドよりも小動物みたいな男が好きなのかな?」




耳に息がかかりそうな距離まで詰め寄られ、顔をそむけた俺。

そんな俺の目を覗きこむようにして、ケンゾーはわざと悪戯に口元をクイッと持ち上げる。


近寄んな!

ジロリと目を細めて俺は、のしかかっていたケンゾーの腕を振り払った。





「……勘違いすんな。 だいたいな、小動物ってなんだよ!」


「お~こわ。まるで縄張りを荒らされてる猫みたいだな、要は」


「あんだと?」


「ほーら、すぐそうやってムキになるとこ」


「…………」





……グッとなぜか言葉を失った俺。



勝ち誇ったように鼻で「フン」と笑ったケンゾーは、やっとその体を離した。
 




「大丈夫だって。 キミが告白されてた事は未央ちゃんには黙ってるから」

「……な」

「……そのかわり、ひとつ頼みがあるんだけど……聞いてくれるよね?」




くそっ、よくわかんねぇけど……言い返せない。




ニヤリと不気味な笑みを湛えたケンゾー。

俺はそれを横目にがっくりと肩を落とした。






……やな予感。