まさか。
そんな事があるわけがない……。
コツコツと革靴のような足音が聞こえる。
近づいてくる。
「いや~、なんだよ。 いつこっちに来たんだよ? それにしてもこんなとこでお前に会うなんてほんとビックリだな! 家、この辺? あ! お前が居るってことは……未央ちゃんも帰ってきてるだろ? あれから未央ちゃんち行っても誰もいなくて焦ったんだけどさ~」
弾丸のように話続ける、ハスキーな声の主。
ギギギって音が聞こえそうなほど、首が固まっている。
それを無理矢理動かして俺はなんとか振り向いた。
「……ケンゾー……なんでアンタがここに……」
「それは俺のセリフ! あ、ストーカーとかじゃないっつの、そこんとこ間違えないよーに!」
「……別にそうは言ってねえよ」
うぜぇ……。
ここ(日本)にいるはずのないケンゾーがここにいる。
しかも、初めて会った時のように半紙を片手に持って。
さらにその肩には大きなボストンバッグが下げられていた。
旅行?
……違うか。
元々日本に住んでたのに。
「要はこんな時間になにしてたのぉ? 危ないだろ~お前1人じゃ」
「――あ?」
ケンゾーは筋肉質な腕を組んで、口元を緩めながらジロリと俺を見た。
コイツ……。
マジでケンカ売ってんの?
なんか突っかかるんだよな。
思わず引きつった笑顔になる。
頬がピクピクと痙攣して、俺はそれを誤魔化すように額を手の甲で押さえた。
その時、Tシャツの袖をクイッと引っ張られ、俺は顔を上げた。
「……要、だあれ?」
「…………」
やば。
典さんがいたの、すっかり忘れてた。



