「あのね、近いんだから自分で帰れるでしょ」
眉間に寄せたシワ。
そこをツンと指差され、迷惑そうに顔をしかめた俺のコトなんかお構いなしで、目の前の酔っぱらいはグイグイ腕を引っ張る。
「こんなか弱い女の子1人でぇ? ムリ~」
「んじゃ、来んな!」
バランスを崩しそうになりながら、典さんの肩を押しやった。
「あー! いいのかな? 大事なお客さんなのに……」
「最悪だな、あんた」
「褒め言葉? ハイ、それならお姉さんをしっかり送りなさい」
この女……。
ピクピクと頬が痙攣する。
うぜぇ……。
俺は大きくため息をつくと、俺は腕を掴まれたまま店の鍵を閉めた。
なんなんだよ、マジで。
自転車を持っていきたいけど、この絡みついてるのが邪魔で歩けない。
――しょうがない、また戻ってくるか。
俺は仕方なく自転車をそのままにして、グテグテの典さんを引きずるように歩きだした。
見覚えのある古びたアパートは、すぐに姿を現わした。
その間も、なにやら典さんは俺に話しかけてはいたけど、そんなのはどうでもよくて。
とにかく早く帰りたい、ただそれだけだった。
「ほら、着いた。 それじゃ、俺は帰るから」
「要ぇ~~、今日こそは泊って行ってくれるでしょ?」
…………はあ?



