「ねー、要。 あの人……また来てるね」
「……」
トレーに、大きなパフェと冷たいアイスティーを乗せた美咲が、こっそりと俺に耳打ちをする。
その言葉に、チラリと視線だけを動かして1番奥の席を見やった。
……いる。
短い髪をフワリとセットして、淡いクリーム色のキャミソールを身にまとい、相変わらず短いズボンをはいて、惜しみもなく真っ白な足をさらけだしてる。
彼女は指定になった席に座って、雑誌を読んでる。
ジンさんの代わりに、このJIJIでバイトするようになってすでに3日がたっていた。
あの夜から、神崎典は宣言通りこのカフェに足を運んでいる。
黙ってれば、確かに年上に見えるかも。
未央が20になったらあんな感じなんだろうか……。
外から差し込む光に、その髪がキラキラと透けて見えた。
と、いきなり美咲が俺の視界に割って入って来た。
「……未央ちゃんに似てるからって。 変な気起こしちゃダメなんだからね」
「…………。 アホか」
ジトーッと俺を睨む美咲の顔をグッと押しやる。
くるりと向きを変えてカウンターに戻った。
チョコレートの棚を覗き込んで、カラカラとガラス戸を開けた。
同時にフワリと俺を包み込む甘い香り。
その瞬間、あの夜の記憶が蘇ってきた。
――――……
――……
「――要、おかえり」
真夜中。
なるべく未央を起こさないようにと静かに開けた玄関のドア。
でも、それに気づいた未央はパタパタと足音を鳴らして俺を出迎えた。
「……ただいま」



