溜息をひとつ。
自転車を引き寄せながら、俺は街灯で逆光になったそのシルエットを眺めた。
「……さっきはごめんね?」
そう言って、短い髪を手ぐしで撫でたのは、さっきの未央似の子だった。
「や、俺に謝ってもらっても困るんですけど。 ……悪いと思ってるなら早くうちに帰ってください」
一体どう言うつもりなのか。
彼女はかごのバッグを肩にかけなおしながら、俺に歩み寄る。
「そうなんだけど……。 うん、そうだよね……ごめんなさい」
シュンとうな垂れて、俺に背を向けた彼女。
やっと帰る気になったらしい。
長い影が俺から離れて、ユラユラ揺れた。
勘弁してよ……。
やっぱりほっときゃよかった。
…………。
……あー、もうッ!
クシャリと髪をすいて、俺は一歩を踏み出した。
そしてあっと言う間に彼女に追いく。
「……こんな時間に女の子1人じゃ、危ないでしょ。 送ってくよ。 家、どこ?」
溜息混じりにそう言って、彼女に視線を落とす。
キョトンと目を見開いた彼女、でもすぐに嬉しそうに目を細めた。
「ありがとう。 優しいんだね」
「……もしアンタになんかあったら、俺が気分悪いだけだよ」
「ふふ」
肩を震わせて、首を傾げて笑うその姿に一瞬息を呑む。
……。
似てるのは顔だけで、よく見たら全然違う。
――だけど。
やっぱり、俺は。
この手の顔に弱いらしい。



