妙なだるさを感じるのは、きっと最後の出来事のせいだろう。
戸締りを確認していると、美咲が俺に声をかけた。
「要、今日はお疲れ様ー。 また明日もお願いね」
「おつかれ。 つか明日美咲休みだろ」
表のボードを片付けながら、美咲に視線を投げかけた。
「そうなんだ、ごめんね?」
「別にいいけど」
「えへへ~」
俺のやっていることを眺めながら、美咲は意味深に笑った。
その顔には、「聞いて欲しい」と書いてある。
……なんだよ。
面倒くせぇな……。
「…………明日は“ジュンヤ”とデート?」
「そうなんだあ……ってなんでわかったの?」
ほんとに驚いてる美咲。
内側から鍵を閉めて、カーテンロールを下げた。
美咲のそんな顔をチラリと眺めながら、
「顔に書いてある」
そう言って自分の額を指差した俺を見て「あはは、さすが~」なんて笑う美咲。
美咲は以前よりもよく笑う。
あのジュンヤの影響なんだろうな。
「あ、要? ごめん、あたし先に行くけど……」
「うん、ちゃんと鍵しめてくよ。 行って」
「ありがとう。 それじゃ、おやすみ! 未央ちゃんによろしくね」
「んー、おやすみ~」
ヒラヒラと手を振って、慌しく裏口へ向かっていく美咲の背中を眺めながら俺はエプロンに手をかけた。
鞄を肩にかけて、自転車の鍵を手の上で転ばせながら俺も裏口を出た。
深夜の街。
だけどまだそこは明るくて。
駅前のこの通りは、朝まできっと眠らない。
「…………」
脇に止めてあった自転車に手をかけた、その時だった。
街灯に照らされた、長い長い影。
その影が俺に追いついて、足元を暗く濁した。
「……なにしてんの?」



