「……なんすか」
「何って……わかってるんでしょ?」
俺の腰に腕を回して、その果実を惜しみもなくくっつけてくる、未央似の彼女。
鼻にかかる甘ったるい声。
すり寄せられた頬。
回された腕は、スルスルと上がってきて俺の胸を捕らえた。
「今日、この後何時に終わるの?」
「……」
「あたし、もっとキミと話がしたいな」
「……」
グラスを持っていた手を離すと、俺は彼女の手にそっと触れた。
未央よりも華奢な腕。
その手を解いて、俺は彼女に視線を落とした。
「俺は、アンタと話す事なんてないですから」
そう言って、にっこり微笑む。
彼女は大きな瞳をさらに見開いて、キョトンと瞬きを繰り返した。
さっさとトレーにすべての食器を片付けた俺は、それを片腕に乗せるとサッとテーブルとクロスで拭いてその場を離れた。
「……はあ、やっぱり首突っ込むんじゃなかった」
……あの手の顔は、弱すぎる。
小さく呟いて、チラリと時計に目をやった。
もう閉店時間の10分前だ。
やっと終わる……。
なんか長い1日だったな……。



