「――お客様、まもなくラストオーダーとなりますが?」
彼女と男の間に割って入るように、スッと腕を伸ばした。
男の顔を覗き込みながら、いつもの営業スマイルを向ける。
「すみません、なにかご注文でしたか?」
さらに彼女を背中に隠すように立つと、伝票に視線を落とす。
「…………いや、会計だよ」
「ありがとうございました。 ではレジの方へどうぞ」
小さく舌打ちが聞こえ、男はバツが悪そうに目を逸らした。
もう1人の男も、微笑む俺をジロッと睨むと、酔っている男の肩を掴んでレジへ向かった。
「相田さん、俺行きます」
「あー……んじゃ、よろしく」
成り行きを見守っていたバイトの後藤が、俺にこそっと耳打ちした。
そのまま後藤の手に伝票を預けて、俺は「ふう」と溜息をついた。
あ~あ。
結局俺、首突っ込んでるし……。
あー言う酔っ払いが1番困る。
いくら騒いでくれても一向に構わない。
別に、誰が絡まれててもある程度はほっとくんだ。
いい大人なんだし。
俺も興味ないし。
でも……だけど、今回は……。
「あの、助けてくれたんだよね?」
「……」
腕を後ろで組んで、俺を覗き込んだその顔に、思わずたじろぐ。
だって、俺の顔色を伺うようなその顔は、未央もよくするんだ。
俺は彼女の顔から視線を落とすと、テーブルの上のグラスをトレーの上に乗せる。
一体何杯飲んだんだよ……。
「――俺は何もしてないですよ。 でも、もうこんなマネはしないで下さい」
背を向けたままそう言って、ハッとして手を止めた。



