この時間にもなると、お酒を飲んでる客が大半だ。
カフェに来る客に、マナーを守らない人はほとんどいない。
ひとつずつテーブルに顔を出し、追加オーダーがないか聞いて回った。
伝票を片手に、最後のテーブルに向かおうと顔を上げたその時だった。
「……なに言ってんだよ、最初の約束と違うだろ」
「おいしかったね、はいサヨナラ、なんて。 お前ふざけるのもいいかげんにしろよ」
――?
カーテンで仕切られた個室。
そのシルエットから、大きな男が2人。
なにやらもめてるようだ。
俺は暫くそこにとどまって、様子を伺った。
「誘ったのはお前だろ、早くしろ!」
「ほら、立てよ!」
酔っ払ってるのか先に喋った男は少しろれつが回っていない。
……あ~あ、しょーもな。
下手に首を突っ込んで面倒なことになるのもやだし。
どうすっかな。
小さく溜息をついて、手にしていた伝票を首元にトンッとあてた。
その時、カーテンがフワリとめくれて。
2人の男に引きずられるように、女の人が姿を現した。
…………な……。
「……痛い! 痛いってば、離してよっ」
引っ張られてる腕を引き離そうと身をよじる彼女を見て、俺の体はその場に縛り付けられた。
もう、思考回路も切断。
……嘘だろ?



