俺はあの頃のように、忙しなく動き回っていた。
ぎこちなかったのも最初だけで、体がしっかりとどう動けばいいかを覚えてくれていた。
少し落ち着いてきた店内。
「やっぱり“JIJI”には要がいて、やっとほんとの“JIJI”になるね」
ジンさんに教えてもらったチョコレートの補充をしていた俺を、カウンター越しに覗き込んで、美咲が嬉しそうに言う。
俺は手を止めずにチラリと美咲を見上げて、またチョコを眺めた。
甘い香りに包まれて、酔ってしまいそうになる。
…………。
美咲は上機嫌で鼻歌を歌って、カウンターの上のクッキーの補充を手伝い始めた。
「――なあ」
「んー?」
まるで宝石のようなチョコレート。
『shine』に並んでたシルバーアクセにそれはよく似ている。
俺はそんなキラキラ光るチョコを見つめながら、さっき感じていた違和感を口にした。
「お前さ、ジンさんのこと。もうふっきれたんだな」
「え?」
美咲がピクリと顔を上げたのを感じながら、俺はあえて手を止めずに続けた。
「ジンさんと、ほんとに嬉しそうに話してたからさ」
「……ん」
口角をほんの少し持ち上げて、美咲は小さく笑った。
「色々あったんだけどね? ちゃんと正面からぶつかって。ジンさんも正面から応えてくれて。 ちゃんとフってくれた。 だからね、あたしちゃんと前に進めてて」
「うん」
「恋もしてる」
「そか」
頷いた俺に、美咲は本当に嬉しそうに、そして幸せそうに微笑んだ。



