――……
――――…………
「お待たせ致しました。 こちらがブルーエンジェルになります」
淡いブルーと黄色のコントラスト。
夏だからか、炭酸の利いたこのノンアルコールのカクテルが飛ぶように売れている。
俺を営業用のスマイルをふりまきながら、テーブルにグラスをコトリと置いた。
「ありがとう……あれ?」
まだ幼さが残るその少女は、俺を見て首を傾げた。
「またこのお店に戻ってきてくれたんですね」
「……え?」
今度は俺が首を傾げた。
にっこりと胸の辺りまであるサラサラの髪を揺らして、彼女は俺に微笑みかけた。
彼女と対面するように座ってるのは、メガネをかけてスーツを着た男。
彼はこの暑いのに、ホットコーヒーを口に運んでいる。
「しばらく見なかったから、やめちゃったかと思ってました」
……俺を知ってる?
なんて記憶をたどると、どうも見たことのある馴染みの顔のようだった。
そうだ、彼女はいつもこの男の人と来て、だいたいこの飲み物を注文していた。
たしか……3年くらい前からだ。
俺はにっこりと笑って、少しだけ首を傾げた。
「――今回は応援ですけど。 ブルーエンジェルお好きなんですね」
「あ……うん。 あたしの名前と同じなの」
「そうなんですか、素敵なお名前ですね」
「あ、ありがとう」
そんな俺達の会話をずっと黙って聞いていた、メガネの彼は穏やかに微笑んでいて。
左の薬指に煌く指輪に、「ああ、愛されてるな」って俺でも感じてしまった。
こんな人達が来てたのか。
顔だって、記憶の片隅に残ってただけだったのに。
俺の事は覚えててくれたんだな。
なんて、ガラにもなくちょっとだけ感動してしまった。



