唇が触れそうな距離で、寸止め。



「……ッ―……」

「……」



真っ赤に染まっていた頬が、さらに火照りだす。


明らかに挙動不審になった未央を見て、思わず吹き出しそうになりながら俺は何とか耐える。




「俺になんか言いたいことあんだろ?」


「……ッ、べ、別になにもない! 離してッ」





フルフルと首を横に振ると、ギュッと目を閉じた未央。



「……」



へ~え……、そんなにイヤなの?


涙目になりながら、俺を拒否する未央になんだか本気で腹が立ってきた。



「誰が離すか。 離して欲しかったら……ほら、キスしてよ」


「えッ!? なに、なに言ってッ……」



バッとその目を開けた未央と、今度はしっかりと視線が絡み合う。
何度も瞬きを繰り返して、とうとう耐え切れずに未央の目は泳ぎまくる。




「……苦しいよ」




ソファの背もたれに、ちゃんともたれられるようにしてんだ。

屈んでる俺のほうが体勢的には辛いっつの。



息が触れる距離。

体温を感じる距離。



大きな瞳をウルウルさせて俺を見上げる未央。
その攻撃に、俺はやっぱりめっぽう弱い。


目の前のピンク色の唇が、ピクリと動いて。
甘い吐息で俺を包み込む。




「……要……」




まだ濡れた俺の前髪が、未央の唇に落ちて。


俺はそっと、その額にキスを落とした。