次の日





朝から彼女は機嫌が悪い。

ソファに座って、一向に俺を見ようとしない。



――ありゃ、相当すねてんな。



そんな未央を横目にして、髪を洗った俺は洗い立てのTシャツに腕を通した。


テレビからは、朝のニュースが報道されてて。
今日も各地で35℃を超える猛暑日になる、なんて聞こえ、うんざりしながら冷蔵庫開けて、ペットボトルを取り出した。


膝を抱えて座る未央は、きっとテレビなんか聞いてない。



気になってるのは、たぶん、俺のコト。



グラスに注いだ麦茶を、喉に流し込みながら考える。

――なんで俺のコトで未央が怒ってるか。



「…………」



ニュースが終わると、ブラウン管から流れる賑やかなCM。



そんな音をかきわけて聞こえる、蝉の声。
窓の外からは、眩しいほどの太陽の陽射しが注ぎ込んでいた。


きっと、もう外は30℃を超えてるだろうな。


ぼんやりと外を眺めてる俺に、チラリと視線を移した未央。

唇をキュッと結んで、大きな瞳を揺らして、その視線を投げかける。



……ほんっと、わかりやすいヤツ。







「……」

「……ちょ、ちょっと要、なに?」



ソファの後ろから未央の体をそっと引き寄せた。


その瞬間ビクリと震えた体。
真っ赤に染まる頬。
絡まる俺の腕を引き離そうと、もがく細くて華奢な指。



それでも俺は、耳元に唇を寄せて意地悪く囁く。




「逃げんな」


「……っ……」




片腕で簡単に捕まえられる。



空いている手で
未央の頬を包み込んで、少し強引に上を向かせた。