頭が理解するのに、少し時間がかかったに違いない。
「……」
ジンさんによって握らされた、懐かしのネームプレート。
それをただ眺めていた俺の肩を、誰かがバシンと叩いた。
そこでようやく手元から視線を離した俺の顔を、なんとも楽しそうに覗き込んでたのは美咲だ。
「ジンさん不在の5日間、よろしくね☆」
「……え? ちょ、俺やるなんて一言も……」
つか、5日も!?
絶対、無理。
1年半のブランクは絶対に大きいはず。
無謀にも程があるっつの。
だいたいわざわざ帰ってきてるのに、なんで働かなくちゃいけないんだよ。
「悪いけどジンさん、俺には……」
――――出来ない。
溜息を吐きながら、そう言って美咲からジンさんに視線を移した俺はそのまま言葉を呑み込んだ。
「ほら、見て。 名前はなー、ナギサって言うんだ」
携帯の画面を見て、その目じりを下げてる大の大人。
「かわいいだろ? どうも俺に似てるらしい」
「ジンさんに似たら、目が細くなるでしょ?絶対奥さんだよ。 ほら、しっかり二重」
「良く見ろ、俺は奥二重」
「え? あ、ほんとだー。でも一重に見えるよ」
からかうように言って笑う美咲に、ジンさんも笑顔で答えた。
「…………」
あーあ、なんなんだよ。
……ったく。
俺は気づかれないように小さく溜息をつくと、手の中のネームプレートをもう1度眺めて、それをデニムのポケットに押し込んだ。



