ふと膝の上で組んでいた両手に視線を落としたジンさんは、それから体をこちらに向けて、俺を真っ直ぐ見た。
「実は、要に折り入って頼みたい事があるんだ」
「……頼み、スか?」
「迷ったんだけど、丁度要がこっちに帰ってくるって聞いて、やっぱりどうしてもお前に頼みたくて」
「……はあ」
俺に、頼み?
キョトンと首を傾げた俺を見て、ジンさんはポケットから何かを取り出した。
「俺の嫁さん、実家が遠いのは知ってるよな?」
「えーっと……九州の方、だっけ?」
それと、俺に頼みってどんな関係があんの?
ますます意味がわからなくて、腕を組んだまま宙を仰いだ。
「鹿児島県」
ジンさんはそう言って、手に持っていたものを俺に差し出した。
「向こうで子供産んだから、俺嫁さんに会いに行きたいと思ってたんだけど、この店閉めるわけにはいかなくてさ。 ……それで、要。 お前に頼みたいんだ」
ジンさんの顔を見てから、その手に視線を落とす。
それは、金のネームプレート。
そこにしっかりと彫られた、“AIDA”の文字。
……これって?
「この店、俺が居ない間、オーナーとしてまとめてくれないか」
ジンさんはそう言うと、俺の手にそれを握らせて悪戯に微笑んだ。



