ヒラヒラと目の前をよぎるのは、クラッカーの中身。
その向こうに見える、見覚えのある顔。
頭に乗っかった紙テープを取ることも出来ず、俺はその場に立ち尽くしていた。
「……ジンさん? 美咲も……一体なに?」
「――驚いた?」
そこには、さっきまでいなかったジンさん。
美咲、それに旬や早苗もいた。
他にもどっかで見たことあるような顔が……。
固まっている俺を見上げて、してやったりと悪戯な笑みを浮かべたのは美咲だ。
「……どう言うつもりだよ」
その顔に、なんだか無性に腹が立つ。
驚きとかそんな問題じゃない。
店ほったらかしで、一体なにしてんだっての!
「おーい、相田のやつビビッて固まってるぞ」
「ははは。 写真写真ー!」
笑いながら口々にそう言って、美咲が俺の腕を引っ張った。
強引に引き寄せられて、俺は崩れるようにソファに腰を落す。
「ごめんね? 1度でいいから要の驚いた顔見たくって。 大成功!だねッ☆」
「……なんだよそれ」
マジで呆れた。
はあーって大きな息を吐き出しながら、髪をクシャクシャっとかき上げた。
そんな俺に気づいてか、今まで黙って成り行きを見守っていたジンさんが、困ったように口を開いた。
「まあ、そんなに怒るなよ。 みんなサプライズでやろうって事になったんだ」
「…………」
まるでなだめるような声。
いつかの、マスターみたいだな、なんてふと思う。
「ジンさんが店を開けるなんて。 ありえないはずだよ」
「はは。 相変らず要にはお見通しだったってわけだ」
短い髪をポリポリと掻いて、ジンさんは目じりを下げた。



