[要sid]
★
ジリジリとアスファルトを焼く太陽の陽射しに、俺は思わず手をかざした。
手の隙間から見えた空は。
相変らず抜けるように青くて。
真っ白な雲が、呑気に浮かんでる姿はなんとも言えない気持ちにさせた。
久しぶりに通るな、この道。
駅までの道のりは、歩いて20分くらい。
真夏の昼下がり。
さすがに暑い……。
滴り落ちる汗を、Tシャツの袖で拭いながら後ろを振り返った。
「大丈夫か?」
「うん、平気平気」
俺の声に、下を向いていた未央は顔を上げた。
相変らずあちこちに飛び跳ねてる髪が、未央の動きに合わせて揺れた。
……顔、真っ赤。
全然平気って感じじゃないじゃん。
心配させまいとして、そう言ってるのはわかるけど。
俺はポケットから小銭を出すと、近くにあった自販機で冷たい缶ジュースを買った。
「ほれ」
「へ?」
俺の行動をきょとんと眺めていた未央。
差し出された手元と、俺の顔を交互に見て首を傾げた。
あのなー、なんでわかんねぇの?
ま、未央らしいけど。
思わず緩んだ頬。
それを隠すように、俺は汗をかき始めた缶を未央の頬にペタッとくっつた。
「ゆでミオ」
「……な……」
さらに真っ赤に染まる未央。
慌てて俺の手から缶を受け取ると、眉間にグッとシワを寄せた。
見てみぬふりして、わざと意地悪く口角を上げた俺は、さっさと先を急ぐ。
「何突っ立ってんの? 置いてっちゃうよ」
「ま、待ってよー」
見えてきた駅前通りに、ホッとして少しだけ歩く速度を緩めた。
あの角を曲がれば、クリーム色の壁が現れるはず。
久しぶりのカフェだ。