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ジリジリとアスファルトを焼く太陽の陽射しに、俺は思わず手をかざした。

手の隙間から見えた空は。
相変らず抜けるように青くて。

真っ白な雲が、呑気に浮かんでる姿はなんとも言えない気持ちにさせた。




久しぶりに通るな、この道。


駅までの道のりは、歩いて20分くらい。

真夏の昼下がり。
さすがに暑い……。



滴り落ちる汗を、Tシャツの袖で拭いながら後ろを振り返った。



「大丈夫か?」


「うん、平気平気」



俺の声に、下を向いていた未央は顔を上げた。

相変らずあちこちに飛び跳ねてる髪が、未央の動きに合わせて揺れた。



……顔、真っ赤。


全然平気って感じじゃないじゃん。



心配させまいとして、そう言ってるのはわかるけど。




俺はポケットから小銭を出すと、近くにあった自販機で冷たい缶ジュースを買った。



「ほれ」


「へ?」



俺の行動をきょとんと眺めていた未央。
差し出された手元と、俺の顔を交互に見て首を傾げた。


あのなー、なんでわかんねぇの?
ま、未央らしいけど。


思わず緩んだ頬。

それを隠すように、俺は汗をかき始めた缶を未央の頬にペタッとくっつた。



「ゆでミオ」


「……な……」




さらに真っ赤に染まる未央。

慌てて俺の手から缶を受け取ると、眉間にグッとシワを寄せた。
見てみぬふりして、わざと意地悪く口角を上げた俺は、さっさと先を急ぐ。



「何突っ立ってんの? 置いてっちゃうよ」


「ま、待ってよー」




見えてきた駅前通りに、ホッとして少しだけ歩く速度を緩めた。



あの角を曲がれば、クリーム色の壁が現れるはず。

久しぶりのカフェだ。