パタパタと廊下を歩く音か聞こえて、ガチャリとリビングのドアが開いた。
「それじゃ未央ちゃん、行ってくるから」
「あ、はい」
体を起こして、おばさんを振り返った。
「行ってらっしゃい、気をつけてね」
そう言って笑顔を作った。
靴を履き終えたおばさんは、あたしをジッと見つめてそして不意に手を鞄を持っていない手を伸ばした。
キュッと握られる、あたしの手。
ジワリとあたたかくて、なんとなく懐かしい感じがした。
「ごめんね? せっかく未央ちゃんが来てくれてるのに……」
「あ、いえ! あたし達もいきなりだったし。 謝らなくちゃいけないのはあたしのほうです」
足元に落としていた顔を上げると、おばさんはちょっとだけ寂しそうに笑った。
「……要のことも、お願いね? 肝心なこと言えないような子だから、きっと誤解招くような事たくさんしてると思うの。 私達がこの家を空けちゃうこと……攻めなかったから……ま、調子いいだけなんだけどね」
「…………」
そう言ったおばさんは少しだけ肩を竦めて見せると、鞄を肩にかけなおした。
「それじゃ、1週間したら帰ってくるから。 待ってて、いーっぱいお土産買ってくるわ」
「はい」
まるで弾むようなおばさんの声に、あたしも自然と笑顔を返した。
おばさんが行ってしまった玄関を見つめて、あたしはなんだか泣きたくなった。
要は……。
人から好かれる分、好意を持たれる分。
どこかで要は傷ついてるのかもしれない。
それを面倒だと思ってしまうのかもしれない。
言葉にするのを。
誰も傷つけたくないから。
だからきっと『損』してるよ。



