ボーっとして何も考えられない。
「……」
フワフワ海の上を漂ってるみたい。
要って、ほんとに何者?
ただ髪や頬に触れてるだけなのに、あたしどうにかなっちゃいそうだよ。
目の前の景色は天井で。
気がつくと、すごく自然な力であたしはソファに横にされていた。
少し伸びた真っ黒な髪が、視界に滑り込んで。
片手で体を支えた要が、まっすぐにあたしを見下ろす。
ドクン
……ドクン
…………ドクン
見つめられてるだけなのに。
お、おかしいな。
なんか、目眩しそう。
「……あ……要……あの……」
さっきよりもずっと強く全身に血液を送る心臓が、ドクドク耳元でうるさくて。
そのせいで潤んだ瞳を知られたくなくて。
耐え切れなくて、思わず顔を逸らしたあたし。
でも。
それは許してもらえなくて。
「なんだよ、逃げんなよ」
「だ、だって……早苗達が待ってる……」
悪戯な笑みを浮かべた要の大きな手に。
いとも簡単に捕まってしまった。
「いいよ。 少しくらい遅れたって」
「……」
絡まる視線
揺れる瞳
高鳴る鼓動
近づく距離
重なる唇
「……ん……」
「……未央」
切なくなるほど、掠れた声が耳に届いて。
さっきより深く。
もっともっと。
まるであたしのすべてを奪っちゃうような、そんなキスを要はくれた。
ああ……。
もうダメです。



