空港から出ると、待っていたのは空から見えたあの積乱雲の群れ。
そして、身も焦がすような灼熱の太陽。
その熱は、ジリジリとアスファルトを照らしていた。
「……あっつーい」
なんて思わず愚痴を零したあたし。
グリルの中の魚になった気分だ。
日本ってこんなに暑かったんだっけ?
まだシカゴの方が涼しかった気がする……。
ミシガン湖のおかげ……だったのかな?
日陰にいても、汗がジワリと背中を伝う。
早苗達が用意してくれていたタクシーが、今か今かと待っていた。
――……♪――……♪――……
車のラジオからは、気分を盛り上げてくれるような夏歌が流れている。
「……」
「……」
だけど。
なぜか凍りついたみたく、無言の車内。
後部座席の真ん中で、あたしは真っ直ぐ前を見据えたまま、首が固まってしまったみたいに身動きがとれなくなっていた。
左隣に座っていた早苗が、ツンと脇を小突く。
チラリと視線だけを向けると早苗は、耳元でそっと囁くように言った。
「……なに、あんたらケンカ?」
「……や。 してない……はず」
してないよ。
……うん。
あたしも早苗の声に負けず劣らずの小声で返すと、今度は右隣をチラリと盗み見た。